映画「マルタのことづけ」(クラウディア・サント=リュス監督)。公開中(ビターズエンド提供)【拡大】
抑制された演出が想像力試す
全編にわたってシュレンドルフ監督の演出は控えめに見えるほど抑制されている。ともすれば物足りないと感じてしまうかもしれないが、そこは観客の想像力が試される部分であろう。戦争という状況のもと、生き延びるために軍の命令に従うという立場を選んだ人間と、従わなかったために死を突きつけられた人たちの、強烈な抑圧の中での物語なのである。
2012年、第62回ベルリン国際映画祭で本作が上映された時、ベルリンの観客はシュレンドルフ監督にスタンディングオベーションを送った。「ドイツとフランスの和解なくしてヨーロッパはない」と言い切る75歳の巨匠は、今も第二次世界大戦下の物語を撮り続けているという。歴史をひもとくとき、被害者としての主張をぶつけ合うばかりの東アジアの現状にウンザリしつつ、「映画人の端くれとしてお前も試されているんだぞ!」と活を入れられた思いである。10月25日から東京・シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。(映画監督 ヤン・ヨンヒ/SANKEI EXPRESS)