9月29日以降は、毎日のように遺族取材を行った。愛する家族を亡くした直後に取材に応じてくれる遺族は少ない。それでも、「今後、少しでも安全に山登りができるように」と、取材に応じてくれた方もいた。夫を亡くした長野県の女性はその一人だ。
女性の夫は、頂上付近で噴火に巻き込まれたのだが、噴火の瞬間をデジタルカメラに収めていた。写真は激しく立ち上る噴煙から逃れようと必死に走る登山者の姿を捉えていた。「この衝撃的な写真を多くの人に見てほしい」。最愛の夫を亡くし、悲しみにうちひしがれる中で、きぜんと取材に応じたのには、こうした思いがあった。
御嶽山の噴火で犠牲となった人のほとんどが、噴石が直撃したことによる損傷死だった。「写真なんか撮らずに逃げればよかったのに」。女性は何度もそう口にしていた。
「山の安全のために」。辛い状況の中で取材に応じてくれた遺族の思いを少しでもくむことはできただろうか。来春以降、残る行方不明者7人の方が見つかることを願ってやまない。(大橋拓史/SANKEI EXPRESS)