悔やむ山岳写真家
「2つのサインを見逃した…」。御嶽山(おんたけさん)で噴火に見舞われ、山頂付近から生還した長野県伊那市の山岳写真家、津野祐次さん(68)は登り慣れた霊峰の登山道で、普段とは異なる2つの自然現象に遭遇していた。突然に晴れた濃霧、腐った卵のような強烈な臭い。噴火の前兆だった可能性もあり、津野さんは「油断があった」と後悔を語った。
御嶽山が噴火した9月27日。津野さんは朝、長野県側の黒沢登山口から頂を目指し、濃い霧が立ちこめる登山道を進んだ。視界は50メートルほど。噴火の約40分前となる午前11時10分ごろに8合目半を過ぎた。
「わー、きれいだね」。登山者たちがそろって歓声を上げた。立ち込めていた霧が一気に晴れ、澄んだ青空がのぞいた。「こんなこともあるんだな」。20年以上前から年に10回ほど御嶽山に登り続け、通算では200回を超えているが、初めての経験だった。