米国と比較してロシアの偵察衛星や通信傍受に関する能力は低い。しかし、ロシアにとって死活的利益がかかっているウクライナ東部においては、ロシアは全力を尽くして衛星による画像情報や盗聴による通信情報を収集し、分析している。マレーシア航空機が撃墜された直後から、それが親露派武装勢力によるものであることをプーチン氏はつかんでいた。しかし、真実を発表してもロシアに益することがないので、プーチン氏は沈黙していた。今回、BNDが、撃墜が親露派武装勢力によって行われたと確認した事態は、国際社会の誰もが想定していたことであり、ロシアに打撃を与えるものではない。
ウクライナ軍の能力露呈
むしろ注目されるのは、シンドラー長官が親露派武装勢力がウクライナ軍の基地からSA11(ロシア名9K37「ブーク」)を奪ったという事実を明らかにしたことだ。SA11は、地対空ミサイルと自走発射機によるシステムだ。発射母体が標的に電波を照射し、標的からの反射波をミサイルに搭載されたシーカーで検知することによって標的を追跡するセミアクティブ・レーダー誘導方式の地対空ミサイルである。射程は3~32キロ、高度は2万2000メートルに及ぶ。ヘリコプターや飛行機のみならず、巡航ミサイルを撃墜する能力がある。