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誰かと誰かを引き合わせてくれるもの 「ふたつのしるし」著者 宮下奈都さん (2/3ページ)

2014.10.26 11:05

地元・福井で夫と子供3人で暮らす。夫婦そろって読書好きという作家の宮下奈都(なつ)さん。「今回は珍しく夫がほめてくれたんです。理屈抜きで幸せな気持ちになれたって。ホッとしました」と笑う=2014年10月22日(塩塚夢撮影)

地元・福井で夫と子供3人で暮らす。夫婦そろって読書好きという作家の宮下奈都(なつ)さん。「今回は珍しく夫がほめてくれたんです。理屈抜きで幸せな気持ちになれたって。ホッとしました」と笑う=2014年10月22日(塩塚夢撮影)【拡大】

  • 「ふたつのしるし」(宮下奈都著/幻冬舎、1300円+税、提供写真)

 奇跡よりささやかな

 一方、もう1人の主人公、遥名(はるな)は勉強もでき、真面目な女の子。できるだけ目立たないようにと、息を潜めながら毎日を過ごしている。金沢市に生まれ育った遥名は、親の反対を受けながらも「特別ななにか」を求めて東京の大学へ進学。大手企業に就職する。「私も福井県に生まれ育って、大学進学のために上京しました。今回の作品では2人の主人公のどちらにも肩入れしないようにあえて三人称を使っているのですが、遥名は自分と重なるところが多く、ついつい『私』と書きそうになってしまいました(笑)」

 ドラマチックな展開はほとんどない。しかし、丹念に描かれた日常のきらめきや痛みが、読む者の胸を切なくさせる。「普通の人を書き続けるのは、私自身がすごく普通の人間だから。普通の人生にも、派手ではないけれどドラマはある。大学に入るとか、一見普通のことに見えても、本人にとってはすごい出来事なわけです。楽しかったり、悲しかったり。好きな人や大事な人は、必ずしも派手な人ではない。そんな彼らが何を思って、どうやって生きているんだろう。そこを描いていきたい」

しるし「偶然よりかは縁があって、奇跡というよりささやかなもの」

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