【本の話をしよう】
画像処理で消して
日本各地で古民家のリノベーションを手がけるなど、独自の視点と手法で日本の美を掘り起こし、再生してきた米国出身の東洋文化研究者、アレックス・カーさんが、美しい日本の景観を取り戻すための提言を新書『ニッポン景観論』にまとめた。10年以上かけて撮りためた多数の写真をキーに、日本の病と未来を説得力たっぷりに指し示す。
「ここまで来るのに10年以上かかった。僕の集大成ですね」
伝統的な街並みの上に張り巡らされた電線、緑豊かな山河の中をブチ抜く巨大な橋や道路、寺社にあふれる注意喚起の看板…。それらを画像処理で消してみたら? 本書では、「コレクション」と呼ぶ膨大な写真によって、日常に埋没し気にも留めなかったものたちが、いかに景観を阻害しているかを一目瞭然で示す。
「とにかく、目で見て分かりやすく。長年全国各地で講演をしてきましたが、その内容をより多くの人に伝えたいと思った。言葉をいくら尽くすよりも、自分の目で『ビフォー』『アフター』を実感してもらえたら」