「便利と美は両立し得る。壊して新しく作るのではなく、今そこにあるものをどう生かすかにお金を使うべきです。ちい庵(ちいおり)の周りには大きな施設も便利な道路も何もないですが、それでもたくさんの人が来てくれる。そこには『何もない魅力』があるからです。現在、政府も観光立国をうたっていますが、こうした風景を守り、残していくことこそが、大きな観光資源になっていくのだと思います」
古いものの価値を見直すことに知恵とお金を使う。それこそが発展途上国のような感覚からの真の卒業となるのだと説く。「10年前はまだまだ観光の意識が低かったですが、京都をはじめ、規制強化など景観保全の活動が本格的に始まりつつある。新しい動きの芽が見えてきたと感じています。観光はすごいパワーになる。未来を切り開くためにも、日本人の一人一人に、この問題を考えてほしい。国民の意識が変わることで、日本の風土も変わっていくのですから」(塩塚夢/SANKEI EXPRESS)