台風19号に気をとられているうちに、今年は光明寺のお十夜(じゅうや)が過ぎてしまった。毎年10月12~15日のお十夜法要には、境内に露店が並び、夜になっても(というより夜になるとますます)たくさんの人でにぎわう。縁日の帰り道に植木屋さんを冷やかしながら、背中を吹き抜ける夜風に肌寒さを感じ、秋だなあと実感する。
今年はその「秋だなあ」を感じるチャンスを逸してしまった。
浄土宗大本山光明寺は鎌倉時代の寛元元(1243)年創建と伝えられる。境内から材木座海岸まで、それこそ歩いて1、2分。鎌倉でも最も海に近いお寺だろう。
材木座の名前で分かるように、この付近はかつてさまざまな物資の荷揚げで沸騰する中世の一大物流・商業拠点だった。お十夜のにぎわいは、庶民性豊かなお寺の雰囲気をいまに伝えるものでもあるだろう。
残念だなあ。せめてその残り香でもと、10月19日の日曜日の夕方、静寂に包まれた境内を訪れ、それから海岸に出た。おお!豆腐川のかなたには海に沈む夕日=写真。