2030年代に火星有人探査の実現を目指す米航空宇宙局(NASA)が中心となり、米ハワイ島のマウナ・ロア山(標高4169メートル)に建設されたドーム形施設で、男女6人が8カ月間、完全に隔離された状態で生活する実験が行われている。心理状態の変化を観察し、往復に最短で1年かかり、火星に500日間滞在するという過酷な探査に人間の精神が耐えられるかを調べるのが目的だ。NASAは、有人ロケットや着陸装置の開発、基地の建設といった技術的な課題に加え、クルーの精神的な問題が火星探査実現の鍵を握ると位置づけている。
「有人火星探査には心理的リスクに不明な点があり、完全に解明されていない。この問題を解決するまでNASAは火星に人類を送り込むつもりはない」
今月15日に始まった実験の主任研究者である米ハワイ大学マノア校のキンバリー・ビンステッド教授は、調査の重要性をこう強調した。
採石場跡にドーム
米紙ニューヨーク・タイムズやフランス通信(AFP)などによると、参加したのはNASAが選んだ男性3人、女性3人。標高約2400メートルの地点にある火星に見立てた採石場跡に直径約11メートル、高さ約6メートルのビニール製のドーム形施設を建設。宇宙船内や火星基地内と同じ隔離生活に入った。