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【野口裕之の軍事情勢】露引きつける独と北方領土遠退く日本の諜報格差 (5/5ページ)

2014.11.3 06:00

ドイツ・バイエルン州ミュンヘン

ドイツ・バイエルン州ミュンヘン【拡大】

 モサドとも協力

 今や、総合力でCIAをしのぐ米国防総省国防情報局(DIA)でさえBNDに協力要請する。例えばイラク戦争(2003~11年)。ドイツは国連など表舞台では米英のイラク攻撃に反対したが、戦争中、BNDの諜者2人をイラクに潜入させた。シュピーゲル誌によれば、DIAはBNDに33回も情報提供を要請し、BNDは少なくとも15回応じた。2人がBND本部に伝えた情報130件の内、25件が対米提供された。サダム・フセイン大統領(1937~2006年)のレストラン立ち寄り(2003年4月)情報や、イラク軍の移動状況も含まれ、米軍の空爆を可能にしている。

 ドイツが諜報・軍事力を駆使し、高い外交障壁を乗り切っている極め付きの証左は、イスラエル諜報機関モサドとの協力。ナチスのユダヤ人虐殺が醒(さ)めやらぬ1950年以来というから驚く。BNDはモサド工作員に度々旅券を発給、イスラエル軍とレバノンのシーア派過激組織ヒズボラの捕虜交換の仲介まで手掛ける。イスラエル海軍潜水艦部隊の強化にも積極的だ。

 リビアの化学兵器やイラク戦争に関する情報の一端は「モサドの恩返し」だと感じる。東西ドイツ再統一に向けてもBNDがフル稼働したはず。

 「徒手空拳外交」だけで領土が返還されると信じるのは、日本国憲法前文《諸国民の公正と信義に信頼して》と同じくらい愚かな幻想だと、いつ目覚めるのだろうか。それとも…。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS

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