彼我の力関係に鑑みて尖閣問題で日本が譲歩し、その代わり安倍首相の靖国参拝については中国が譲歩したというのが、今回の日中首脳会談における取引の本質だ。外交交渉においては譲歩を余儀なくされるときがある。そういう場合、政府は譲歩した内容と理由を誠実に国民に説明する責任を負う。真実を隠蔽する曖昧な発表は国民を愚弄するものだ。
11月11日付「産経新聞」は、「主張」(社説)で、<尖閣問題については、中国側が今後、「異なる見解」を根拠に領有権問題の存在を主張してくる可能性があり、警戒を怠るべきではない。関係改善を優先させるあまり、「領土」や「歴史」で中国側の一方的な主張に譲ることがあってはならない>と懸念を表明した。筆者もこの懸念を共有する。
安倍首相と習主席との間の個人的信頼関係を今回の首脳会談で構築することはできなかった。今後とも、日中両国は、必要に迫られて「取引外交」を繰り返すことになるであろう。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)