クロサイ保護のためにクロサイを狩る権利を販売するのはいかにも矛盾しているが、DSCのベン・カーター事務局長はAFP通信に「繁殖活動に適さない個体を群れから取り除けば、サイの個体数は確実に増える。(今回の)狩猟には生物学的(に正しい)理由がある」と正当性を強調。DSCは落札金を全額、ナミビアのクロサイ保護信託基金に手渡すとしていた。
世界の富裕層には、アフリカなどで狩猟権を高額で購入し、ライオンやゾウ、サイといった大型の野生動物を合法的に仕留め、毛皮や角などを戦利品(トロフィー)として持ち帰る「トロフィー・ハンティング」を好む人々もいる。アフリカでは、狩猟権の対価として支払われたカネが現地の希少動物の保護や恵まれない子供たちの生活向上に充てられる仕組みができている国もあり、今回の競売もこうした文脈で企画された。
ところが競売が大きく報道されたため、動物愛護団体「全米人道協会(HSUS)」が「憂慮すべき」問題と懸念を表明、獲物の米国内への持ち込みに反対する運動を始めた。国際動物福祉基金(IFAW)の北米担当責任者、ジェフ・フロッケン氏らも「表向き、種の保護という名目で絶滅危惧種の狩猟権を入札し合うことは、屈折した危険な考えだ」とする批判を展開。落札者のノールトン氏やDSCのカーター事務局長宛てに「サイ1頭を殺せばDSCの会員1人を殺す」といった脅迫状が届く事態に発展していた。