この表現を可能とするのが、西陣絣独自の「はしご」と呼ばれる装置である。30センチほどの幅に数千本の糸を25~100段もの「はしご」を使って絵柄を少しずつずらし、美しい模様を描き出すのである。
分業の苦境と可能性
西陣の絣工房はピーク時には120軒ほどあったが、今は7軒ほどだという。専門職による分業体制は市場が大きい時には効率的に機能したが、需要が減少した現在では、ひとつの工程ができなくなると、次の工程が連鎖的にできなくなるというデメリットが生じてしまう。実際、水上さんが絣を作るときには、糸染めなど他の職人とのチームワークが大切なのだが、実際の作業を進めるためには、工程を維持するだけの市場開拓と各工程を理解して調整するコーディネートが大切になる。
西陣絣しか出せないこの美しい模様を求めて、海外の有名ブランドの担当者が水上さんを訪ねてくるという。以前にあるブランドの依頼で水上さんの工房が手がけたグラデーションの生地は「技術的にはお召を作るより楽。しかし、こういう模様を作ろうという発想はなかった」そうだ。