高倉健(けん)さんが亡くなった。83歳という年齢が信じ難かった。健さんは老いを見せず、格好いいまま逝ってしまった。
印象に残る言葉も多い。例えば昨秋、文化勲章親授式の後で「日本人に生まれて、本当によかったと、きょう思いました」と話した。「今後も、この国に生まれてよかったと思える人物像を演じられるよう、人生を愛する心、感動する心を養い続けたいと思います」とも話した。
その機会が失われてしまったことを、心から惜しむ。
数々の任侠映画に主演してスターとしての地位を築いた。東映退社後は、一貫して寡黙で不器用に、試練に耐える日本の男の美質を演じた。多くは再会や再生の物語であり、そこでは愛情や友情が描かれた。
20代からの盟友、長嶋茂雄さんは「ファンの多くは映画の中の高倉さんを見て、日本人の男としてのあるべき姿を学んだのではないでしょうか」とコメントした。
網走、八甲田山、南極など、厳寒の雪中で独り立つシーンが誰よりも似合う俳優だった。スクリーンの外でも、孤高の印象が強い人だった。