「本当は話したいことがあるんだけど」と、昨年9月に私がやっているラジオ番組に出演した直後、去り際にもどかしそうに志磨遼平が言った。そして数日後、志磨以外のメンバー全員がバンドを脱退するというニュースが伝わってきた。バンドが結成されてからずっと追いかけていただけに、ショッキングなニュースだった。
志磨は結成当初、「自分の思い描いていなかったアレンジがバンドメンバーから出てくる」と言っていた。それが志磨の持つ豊かな経験や音楽知識と合わさることでドレスコーズらしさ、ユニークでエネルギッシュなバンドの世界観となっていたのだろう。しかし、4人から出てくる振れ幅のあるアイデアを一つの曲としてまとめ上げていくのは、特にこのバンドの場合は大変なのではないかと感じていた。自分が思いもよらないアイデアたちを、全員が満足する形に落とし込んでいく作業やそこにかける時間と精神的な負担など、計り知れない苦労があったはずだ。
そして最終的に志磨以外のメンバーが脱退して、ドレスコーズは志磨一人で活動を続ける、という事になった。