今でこそ青森りんごは一大ブランドですが、25年前、田村さんが大手青果市場でリンゴの営業を担当していた当時は、バイヤーから「青森県産よりも長野産の方がおいしい」と言われたといいます。首都圏への輸送距離が短く完熟に近い状態で取引される長野産に比べ「日持ち」を求められる青森産は青いうちに出荷せざるを得なかったからです。その言葉が引き金となり「完熟したおいしい青森りんごを出荷し、流通を変えよう!」と、田村さんが転身を決意したのは1989年のこと。後継者不足で引き受け手のない畑を譲り受け、周りのリンゴ農家にノウハウを教わりながら、タムラファームを立ち上げました。鶏糞、魚粕、骨粉など天然ミネラルをたくさん含み、熟成させた自家製の有機肥料。リンゴの実にしっかり日光が当たるよう考えた贅沢(ぜいたく)な植樹空間。そして、完熟する少し手前のもっともおいしくなる時期を見計らった収穫。故郷への熱い思いを抱きつつ、栽培方法を確立し、おいしい完熟リンゴが私たちの手元に届くようになりました。