「すばる」の雪辱
オハラは1935年創業で、人類で初めて有人月面着陸した米アポロ11号に搭載された観測装置の光学ガラスを製造するなど国内外で実績があり、2013年度の国内シェアは6割近い。
ゼロ膨張ガラスの開発は25年ほど前から始め、製法の確立に約2年を要した。ゼロ膨張ガラス「クリアセラム」は温度が上昇した場合に収縮する結晶を配合。ガラスによる膨張が結晶による収縮で相殺され、熱による変形を防ぐことに成功した。温度が10度上がっても長さ5キロのクリアセラムが1ミリしか伸びないほどの精度だ。
国立天文台は1999年、マウナケア山に「すばる望遠鏡」(直径8.2メートル)を設置し観測を開始。オハラも受注を目指したが、米国企業に奪われた。望遠鏡の鏡は口径が大きいほどわずかな光も捉えられるため、直径約30メートルのTMTは光を集める力がすばるの約13倍、解像度は約4倍になる。オハラは今回の採用で雪辱を果たした格好だ。