ウォードは並み居るライバルたちをどのように押しのけ、主役の座を勝ち取ったのだろう。「ローチ監督はグループオーディションの形式を採り、ディベートを開催しました。とにかくジミーは並外れた調整力を発揮した人物です。私の推測では、参加者たちのまとめ役を担った私の雰囲気が、ローチ監督が考えるジミーのイメージに似ていたようなんです。幸運にも、私とジミーの立ち位置が近かったことが合格に影響したのでしょう」。ウォードは控えめに語った。
「労働者の手」演出
役作りで心がけたのは、「アイルランドのチェ・ゲバラ」になることだ。チェ・ゲバラ(1928~67年)といえば、キューバでゲリラ活動を指導したアルゼンチン出身の革命家。「少ない史実から分かったことは、ジミーは反体制的な人物だったということ。実際に彼を『アイルランドのチェ・ゲバラ』と呼ぶ人もいたようです。僕個人は、ジミーに対し、政治の世界を活躍の場とするロックスターというような印象を持ちました。事実、ジミーはアメリカからレコードを持ち帰りました。まるでDJみたいじゃないですか」。自らもDJ経験を持つウォードは声を弾ませた。