その後の政調会長起用には周囲からやっかみも漏れたが、稲田氏は「まったく周りの声は気にならない」と淡々と職務をこなしてきた。ただ、農協改革は安倍首相が「岩盤規制を打破する」と並々ならぬ意欲を見せるだけに、さすがの稲田氏の肩にも重くのしかかる。
稲田氏は農林族議員が議論の中心になりがちな法案検討PTとは別に、党規制改革推進委員会でも検討を進める方針だ。改革に積極的な後藤田正純衆院議員(45)を委員長に起用し、改革への機運を盛り上げる考えだ。
実は、安倍首相は稲田氏の政調会長就任にあたり、党重鎮の二階俊博総務会長(75)の名を挙げ、「困ったことがあれば協力を得たほうがいい」とアドバイスしたことがある。その二階氏は20日の記者会見で、農協改革について「できるだけ時間をかけて慎重に議論をしていくことが大事だ」と述べた。
首相の期待を背負った稲田氏は、トップダウンでの決着をつけたいところだろう。しかし、二階氏ら党側は「丁寧な議論を」と持久戦を主張する。稲田氏は「首相」と「党」とのはざまに立たされている。(力武崇樹、写真も/SANKEI EXPRESS)