昨今、われわれは一般的にストリートダンスを踊る存在を指して一様に「ダンサー」と呼ぶが、そもそも「ダンサー」とは正確にはどのような存在なのだろうか? 言われてみれば正確に定義することのできないこの問題を筆者独自の観点で考察してみた。
ストレス発散から自己表現まで
ダンスを踊っている人間からしてみれば、「お仕事は何ですか?」という問いに「ダンサーです」と胸を張って答えられるということはある種のステータスである。無論ダンスを始めて間もない人間がダンサーを名乗ることはほぼあり得ないが、ストリートダンスの世界は現在、ライセンスや資格のたぐいに左右されることのない世界である。故に「通例」なだけであり、昨日音楽に合わせて体を揺らすことを覚えた人間が翌日から「ダンサー」を名乗ってはいけないという縛りは何も存在しない。ひいては、何がダンスで何がダンスではないのかということすらも実は定義されていないのである。これを逆に考えると、いくつかの決まったステップを知らないが故に「ダンスを踊れない」ということではないということになる。音楽に対して気ままに体を動かすことが、ストレスの発散、自己陶酔、果ては自己表現までをも表す「ダンス」という一言の中に集約されることになる。