基礎から全てを解体した「昭和の大修理」とは違い、今回は部分修理だ。修繕が必要な部分を検討し、しっくいや下地の土壁を解体した。残すところは繊細な作業が求められた。元の姿に戻すため、全ての箇所でミリ単位の正確な寸法を取る必要も。「息が詰まった。解体するたびに国宝を壊したのではと、ためらった」と振り返る。
意識したのは耐久性だ。しっくいは耐火性や耐水性を建物に与えるため、材料練りから配分を間違えることは許されない。厚さは「昭和」と同様に3センチとし、4回塗り重ねた。「50年、100年もたせるつもりで塗った」と作業に当たった中村圭一さん(44)。
難関は大天守の1階部分に当たる一層の南側正面の壁。幅約27メートル、高さ約4メートルと広く、塗るのに時間がかかればむらが出てしまう。職人間で技術力の差もあった。若手をベテランの間に入れ、16人が息を合わせて一斉に塗った。