カナダで高校生活を1年送った後、俳優活動に精力を注ぐため“自主退学”した村上だけに、日本の典型的な高校生へのアプローチは難しくなかったか? 「外国にいたから、かえって客観視できました」と村上。むしろ難しかったのは、堀江監督の「タカシは普通でいいよ」との注文だった。「やぼったいけれど、すごく優しくていい奴…。つまり、他に抜きんでるくらいの普通が求められるということは、それはすでに普通ではないものでしょう…」。早見ら共演者と数回にわたって臨んだリハーサルで、村上はすっかり面を食らってしまった。
思えば、堀江監督とは対照的に、河瀬監督はほとんどリハーサルを行わなかった。「もちろんあらかじめ河瀬監督に相談したうえでの話ですが、僕は演技にアドリブを交えることを許されました。しっかりとした脚本はあるけれど、それ以上に、撮影現場で登場人物がハツラツと生きている-という躍動感を大切にするのが河瀬直美という人でした。一方、堀江監督はお芝居という枠組みの中でリアリティーを徹底的に求めました。どちらもリアリティーがあるんですが、プロセスがまったく違っていて…」。仕事に人一倍「ピュアなハート」を燃やす若い村上にとって、本作は歯応え十分の課題作となったようだ。