エイズと闘う米ロデオ・カウボーイの苛烈な人生を描いた「ダラス・バイヤーズクラブ」(2014年)を手がけ、米アカデミー賞では主演男優賞と助演男優賞をわしづかみで持ち去ったのがこの人、カナダのジャン=マルク・ヴァレ監督(52)だ。新作のヒューマンドラマ「カフェ・ド・フロール」は、彼の故郷でもある現代のモントリオールと1969年のパリを舞台に、時空を超越した2つの愛の物語を同時並行的に描写した野心作だ。ヴァレ監督は「この作品を見るべき理由が3つあります。それは音楽、映画への愛、そして純粋に愛とは何かをそれぞれ考察するためです」と強調した。
1969年フランスのパリ。美容師として生計を立てながら、ダウン症の息子ローラン(マラン・ゲリエ)を育てるシングルマザー、ジャクリーヌ(ヴァネッサ・パラディ)にとって、ローランは唯一の生き甲斐だ。一方、現代のモントリオールでDJとして活躍するアントワーヌ(ケヴィン・パラン)には、2人の娘と恋人ローズ(エヴリーヌ・ブロシュ)がいて、両親も健在。生活に何一つ不自由はなかったが、別れた妻キャロル(エレーヌ・フローラン)は心の傷が癒えていない…。