「僕のワークショップに参加を申し込んできてびっくり」と話す鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)さん(左)と「ちゃんと演技の勉強をしたかったので」と笑う中村中(あたる)さん=2015年3月13日、東京都新宿区西新宿(野村成次撮影)【拡大】
「人は一人一人が違う。最近のギスギスした世相は、自分が理解できないものに対して、憎んだり対立したりする結果。そんな不寛容な時代の恋愛とは何か」。その思いを投影する象徴として中村を起用した。社会にはいろいろな個性を持つ人があり、その存在を受け入れて理解し、恋愛対象とすることも自然の成り行きとする前提もある。
中村は戸籍上の性別は男性で、女優としても多くの舞台で活躍している。今回の出演は、鴻上が主宰する演劇のワークショップに参加したことがきっかけで、自身と同じトランスジェンダーを演じるのは初めて。「抵抗はなく、むしろやりたかった役で、演じることで自分を見つめ直せる。実体験は近道にも遠回りにもなる」と試行錯誤しながら取り組んでいる。劇中でも数曲、歌う予定だ。
自分が形変え、歩み寄る
そんな中村の恋愛観は「歩み寄り」。「私の人生観と一緒なんですが、『遠慮してなんぼ』だと思うんです。愛されたいと思うより、自分から進んで愛していくのが大切。パズルのピースに例えれば、自分が形を変えて歩み寄れば、誰とでもベター・ハーフになれるのでは」