世界各地に神出鬼没に現れ、壁や路上に社会風刺的な作品を描く覆面ストリートアーティスト、バンクシーが、パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍の空爆によって破壊された家のドアに描き残した作品をめぐり、騒動が巻き起こっている。買い取りを持ちかけられた家の住人が、バンクシーの作品とは知らずに現地通貨の700シェケル(約175ドル=約2万円)で売却。その後、100万ドル(約1億2000万円)以上の価値があるかもしれないと知り、欧米メディアに「だまされた」と訴えている。買い主はだましたことを認めながらも、返却するつもりはないという。芸術性や込められたメッセージとは関係なく、作品が高値で取引される現状にバンクシーの心中は…。
空爆で破壊の家に
この作品は、ロンドンを拠点に活動するバンクシーが今年2月にガザに出没して描いた3つの作品のうちの1つ。ロイター通信や英BBC放送などによると、パレスチナ人男性のラベア・ダードゥナさん(33)は、昨夏の空爆で2階建ての自宅が破壊され、玄関の金属製のドアだけが残された。バンクシーは、このドアにギリシャ神話に登場する女性ニオベが嘆く姿をスプレーで描いた。作品はネットで公開され、ガザに出没したことを世界に発信した。