買い主は「保護」主張
一方、買い主の男は、自らも地元住民であると名乗り出てメディアに登場。ロイター通信に、「私も街角に作品を描く芸術家で、彼の作品を所有するのが夢だった」と説明。でたらめな作り話で、作品をタダ同然でだまし取ったことを認めた。ただ、AP通信には、購入目的について、「作品を保護するため」と説明したうえで、「戦争の悲惨さを世界に知らしめるため、ガザの美術館に展示するようバンクシー側の代表者に連絡している」と主張。こちらも「金銭的な見返りはない」と弁明した。
もっとも、バンクシーの作品の価値はうなぎ上りだ。壁ごとはぎ取られた作品は通常、50万ドル以上で取引され、2013年にロンドンで競売にかけられた壁画には、110万ドルの値が付いた。05年にはイスラエルで壁に9作品を描いたが、以来、一帯は観光名所となり、バンクシー・グッズが土産物店で売られるなど経済波及効果も大きい。
こうした風潮は、作品を通じて、民衆に社会風刺や政治批判を促すゲリラ的反体制芸術活動を掲げるバンクシーにはもちろん不本意に違いない。パレスチナのベツレヘムの難民キャンプに住む芸術家、アイド・アラファ氏はBBCにこう嘆いた。
「バンクシーが描くものならたとえ点でも壁ごと持ち去られ、売り飛ばされるだろう」(SANKEI EXPRESS)