コンピューターソフト「AWAKE(アウェイク)」に21手で勝利した阿久津主税(ちから)八段。弱点を見抜き、執念の「はめ手」で最強ソフトを下した=2015年4月11日、東京都渋谷区千駄ケ谷の将棋会館(共同)【拡大】
その直後、「AWAKE」を開発したプログラマーでプロ棋士養成機関の「奨励会」に在籍したこともある巨瀬(こせ)亮一さん(27)が敗着を認め、愛機に投了の動作を取らせた。終局は午前10時49分という異例の早さだった。対局後、阿久津八段は「ソフトを事前に調べて勝ちやすい作戦を選んだ。(初の勝ち越しとなり)とりあえず良かったなと思う」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。一方、巨瀬さんは「(対アマ戦で露呈した)弱点を突かれたら早い投了を覚悟していた。穴があるのは仕方がないところもある」と悔しがった。
背水の陣、万全対策
電王戦は、日本将棋連盟所属のプロ棋士と、世界コンピューター将棋選手権の上位5位までに入ったソフトとが対局するイベント。人工知能のレベル進化を測る格好のバロメーターとして注目されてきた。最初は2012年に将棋連盟会長の米長邦雄永世棋聖(1943~2012年)が戦い、一番勝負で「ボンクラーズ」に113手で完敗。翌年からは5対5で戦い、13年はプロ側の1勝3敗1分、14年は1勝4敗とコンピューター側がプロ棋士を圧倒していた。「すでにコンピューターは人類最強者を超えてしまったのでは」との声も聞かれる中、今回、プロ側は背水の陣で“ファイナル”に臨んだ。