≪さよならベン、おかえりタイガー≫
今大会の主役は、もちろん優勝したスピースである。通算18アンダーは「不滅」といわれたタイガー・ウッズの記録に並び、21歳8カ月の優勝はウッズの21歳3カ月に次ぐ史上2番目の年少優勝記録だ。
もう一人の主役は、そのウッズ。最少スコア記録でスピースに並ばれたウッズは、腰痛による2カ月の休養を挟んだ復帰戦だった。すでに39歳。オーガスタでの復帰戦を周囲は不安視したが、最終日まで戦って通算5アンダーの17位はまずまずだろう。最終日13番のイーグルなど随所に「らしさ」もあり、「メジャーでこれだけ戦えたことは誇りに思う。しばらく休んでもう一度、しっかりと調整する」と前を向いた。
2人を上回る歓声を受けたのは、63歳のベン・クレンショーだった。1984、95年と2度のマスターズを制し、「ミスター・ジェントル」とも呼ばれて選手の尊敬を集めた彼にとって、これが最後のマスターズだった。
決勝ラウンドには進めなかったが、キャディーとの抱擁で涙を流すと、パトロンは総立ちで温かい拍手を送った。