北野作品に初参加した藤は水を得た魚のように演技ができたそうだ。「監督はあまり指示を出さなかったし、僕もそうした話をしない。監督が何を求めているのかと僕は勘に頼って探りましたね。監督が使う『そこを強く』とか、『明るく』といった簡単な言葉の意味を探っていくんです。難しいことはなしですよ。僕は俳優を長くやってきたけれど、大体、映画論とか、『映画とは何か』なんて何にも分かりません」。北野組の俳優は、役を作り込み過ぎてもいけないし、それによって瞬発力が失われてもいけないのだ。
あこぎな暴力団の描写は北野作品の真骨頂でもあるが、本作はこれまで以上に、日常生活に忍び寄る暴力団との“付き合い方”を考える好教材となった。本作で龍三たちに堅気の生活を続けるよう諭し続けるベテラン刑事を演じたのが北野監督だった。
昔は暴力団が興行
漫才師としての顔を持つ北野監督は「暴力団に付き合うわけじゃないけれど、昔は興行そのものを暴力団がやっていたからね。出演した後で聞くと、興行なんて暴力団がやっていたなんてこともあったし。今は暴力団新法があるから、民間人がそういう人と付き合うことは一切ないし、顔を合わせることもない。どっちかというと、今は警察の方が怖いんじゃないの?」と振り返ったうえで、「変なことをしなければ、暴力団に目を付けられることはないよね。裏で悪いことをしているから、ヤクザも警察もたかりにくるわけでね」とシンプルな北野流の処方箋を語った。