何も買わないし、何も売らない。過疎の村に移り住んで、目的もなく、ただ生きているだけ…。いがらしみきお原作の人気コミックを実写映画化した「ジヌよさらば かむろば村へ」(松尾スズキ監督)は、引きこもり同然となってしまった元銀行員、タケの成長物語。コメディータッチの演出ながら、たくさんのエピソードを盛り込んで「人生で大切なものとは何か」-と考えさせる骨太な仕上がりとなった。主演の松田龍平(31)は「タケはいろんな人の顔色をうかがって、多くのリアクションをします。これで作品が成立しているのかな?と思ってしまうほどで、仕上がりを見ないと分からないシーンが多かったです」と撮影を振り返った。
本当の悪者がいない
自殺に追い込まれた融資先を目の当たりにした銀行員のタケ(松田)は仕事に嫌気が差し、過疎化が進む東北地方のかむろば村へ逃げるようにやってきた。お金を見ると過去の忌まわしい思い出が脳裏に浮かび、気を失ってしまう「お金恐怖症」に苦しんでいた。財産は100万円で手に入れた空き家といくばくかの貯金だけ。「ガスも水道も携帯電話も要らない」「現金は使わない」と声高に宣言したタケだったが、当然ながら生活は成り立たない。村長の与三郎(阿部サダヲ)が妻(松たか子)と経営するスーパーで働くことになった。バイト代は食糧の現物支給。村人たちから教えてもらう畑仕事も覚えたころ、暴力団風の男(松尾スズキ)が村に姿を見せ…。