「国内事情に関係した決定」
これは大きな出来事だ。なぜなら、4月22日の時点でロシアのウシャコフ大統領補佐官(外交担当)が、<北朝鮮の金正恩第1書記がモスクワで5月9日に予定される対ドイツ戦勝70周年の式典に出席する意向を確認したと述べた>(4月22日「産経ニュース」)からである。
金第1書記がモスクワを訪問したならば、プーチン露大統領との会談が必ず実現した。プーチン大統領が金第1書記に恥をかかせるような状況は作らない。ウシャコフ大統領補佐官が金第1書記のモスクワ訪問をマスメディアに発表するということは、両国の外務省で訪問の準備について合意ができていたということだ。この場合、準備には首脳会談で発表される合意文書も含まれる。金第1書記としては、国際舞台にデビューする重要な機会であった。それをなぜ、直前になってキャンセルしたのであろうか。
4月30日の記者会見で、金第1書記の訪露中止の理由をペスコフ大統領報道官は、「(先方の)国内事情に関係した決定だ」と述べた。ロシアは金第1書記の訪露を望んでいるが、北朝鮮が断ってきたという意味だ。従って、首脳会談による朝露合意文書の内容がまとまらずに、金第1書記の訪露を北朝鮮がキャンセルしたということではない。