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【佐藤優の地球を斬る】中東から広がるNPT体制崩壊の予感 (2/3ページ)

2015.6.2 17:00

国連総会議場で開かれたNPT(核拡散防止条約)再検討会議の閉幕式で、演説するタウス・フェルキ議長=2015年5月22日、米ニューヨーク(共同)

国連総会議場で開かれたNPT(核拡散防止条約)再検討会議の閉幕式で、演説するタウス・フェルキ議長=2015年5月22日、米ニューヨーク(共同)【拡大】

  • 作家、元外務省主任分析官の佐藤優(まさる)さん=2014年3月20日、東京都新宿区(大里直也撮影)

 イスラエルは、核保有について肯定も否定もしていない。また、NPTにも参加していない。ただし、イスラエルが核兵器を保有していることは、公然の秘密である。イスラエルは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツなどによって無辜(むこ)のユダヤ人が600万人も殺害された経験を踏まえ、二度とこのようなことを繰り返さないとの決意に基づいて創られた国家だ。「全世界に同情されながら絶滅するよりも、全世界を敵に回してでも生き残るために戦う」というのがイスラエルの国是だ。イスラエルは、女性を含め、国民全員に兵役が義務づけられている高度国防国家であり、インテリジェンス能力も極めて高い。イスラエル国家とユダヤ人の絶滅を狙う国家に囲まれているという特殊な条件から、イスラエルは核保有に踏み切った。イスラエルの核は、基本的に防衛的性格を帯びている。それだから、NPTに加わらず、核保有について曖昧政策をイスラエルが取ることを国際社会は認めていたのだ。

 今回、最終文書案がまとまらなかった原因を<事実上の核保有国であるイスラエルを含む「中東諸国が非核化地帯創設を法的に拘束する条約の締結を目指す」とし、イスラエルの友好国である米国などが反発していた>ことだけに求めるべきではないと思う。中東における核拡散を実際に阻止することができる非核化地帯創設に関する国際条約ができる見通しがあれば、米国はイスラエルを説得して、条約を締結することはできたはずだ。

近未来にNPT体制が崩壊するという不吉な予感が…

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