むしろ、核拡散問題をめぐり、国際社会の認識が変化していることが、今回、会議が決裂した最大の理由と思う。4月2日、スイスのローザンヌでイランの核開発問題に関する枠組みに関する合意が、米英仏露中独とイランの間でなされた。合意文書には誰も署名していない仮合意であるが、この内容だと、1年あればイランが濃縮ウランによる広島型原爆を製造することができる。さらにもう1年で弾道ミサイルに搭載可能な核弾頭の小型化が可能になる。
イランが核保有をすれば、サウジアラビア・パキスタン間の秘密協定に基づいてパキスタンの核弾頭がサウジ領内に移動する。それに続き、アラブ首長国連邦、カタール、オマーンなどもパキスタンから核兵器を購入する。エジプトとヨルダンは核兵器を自力で開発するであろう。近未来にNPT体制が崩壊するという不吉な予感がするので、どの国も真面目に新条約を作ろうとしていないのだ。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)