新緑の箱根へ。箱根湯本駅。座席を確保するため、急ぎ、登山列車に乗り込んだ。あれっ。車内は空いている。箱根山の火山活動の影響なのだろうか。発車。列車はぐんぐん高度を上げていく。濃い緑。深い谷。旅情高まる。
宿に着いた。温泉。掛け流しの湯。ああ、いい気持ち。宴が待っていた。美酒。美食。楽しい語らい。満ち足りた。深い、深い、眠りにつく。
翌日。バスに乗った。強羅(ごうらら)の急坂を越え、林を抜けていく。ポーラ美術館に到着した。青空。深い森。白い建物。美しい調和。
ポーラ・オルビスグループのオーナーだった鈴木常司(つねし、1930~2000年)が四十数年かけて美術品を収集した。その数、約9500点…。
モネの「睡蓮の池」。ピカソの「海辺の母子像」。セザンヌの「砂糖壺、梨とテーブルクロス」。岡田三郎助の「あやめの衣」。そして黒田清輝の「野辺」。美の力に圧倒される。
数ある作品のなか、わたしは2人の少女に魅せられた。
ルノワールの「レースの帽子の少女」。柔らかな帽子をかぶった少女が横向きに座る。金髪。青い目。だれを見詰めているのだろうか。頬はバラ色に輝く。唇はふっくら。ほほ笑んでいる。愛らしい。可憐(かれん)な少女はルノワールによって永遠の美を与えられたのではないか。