もう一人。強烈な印象を放つ少女がいた。岸田劉生の「麗子坐像」。ただならぬ絵だ。背景は真っ黒。赤と黄色の着物。麗子は、頬をふくらませ、あらぬ方向を凝視する。怒っているのだろうか。手は床につく。リンゴ。
岸田は麗子が誕生したとき、こう記した。-きっと御前を生涯愛してやる。画家はまな娘を描き続けた。幼い頃から15歳まで。その数、約50点にのぼるという。
わたしは小学生のとき、教科書で初めて麗子像を見た。なんという少女だろう。この世に実在するのか。あの衝撃は忘れられない。
さて、父親に執拗(しつよう)に描かれた少女の人生はどうなったのか。気になる。帰宅して調べた。麗子は健やかに成長。画家、女優として活躍した。写真を見つけた。驚いた。美人なのだ。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)
■逍遥 気ままにあちこち歩き回ること。