ノルウェーの劇作家イプセンが19世紀に書いた劇詩「ペール・ギュント」が現代によみがえる。演出家の白井晃(58)が7月に舞台化、主演のぺールにストレートプレー初主演の内博貴(うち・ひろき、28)を迎える。人生に迷い、放浪の旅を続けるペールには現代の悩める若者像も投影される。白井は内に等身大のペールを期待、その姿を鏡として「人がいかに生き、死ぬかを考えたい」と話す。
現代の若者像投影
ペール・ギュントは、イプセンと同じノルウェーの作曲家グリーグが書いた楽曲とともに、1876年に初演された。落ちぶれた豪農の息子ペールが、行き当たりばったりの恋や人生に思い悩みながら自分探しを続け、青年期から老年期まで世界中を旅する冒険譚(たん)。楽曲は誰もが聞いたことのあるクラシックだ。
だが「白井版」は、現代の荒くれたイメージを打ち出す。物語は破壊された病院のような廃虚を背景に、ペールを思わせる胎児が夢を見ているかのように進む。音楽はジャズピアニストのスガダイローが、即興に近い生演奏をつける。
斬新なアレンジにはペールを「今の時代に放り込む」(白井)狙いがあり、廃虚は世界中で続く紛争を映し出すものだ。構成と演出は白井、翻訳と上演台本は谷賢一が担当する。