雨のパレードの音楽をペイントに例えるなら、気に入った絵の具から描くのではなく、見つけた素材をサウンドに溶かし、絵の具となる音色を作ってからサウンドスケープを描き出す、といった作風だろうか。最新作『new place』の曲「夜の匂い」についてギター担当の山崎康介は「最初に弾いていた環境音的なものがありきたりだったので、レコーディングの時にはスタジオにあったブラシで弦をこすって弾いていました。途中、髪の毛にも移って(笑)。今回はスライサーも使ったし、ギターのアプローチ以外の音に聴かせられるようなものをうまく生かせたかな、とは思います」と話している。
ひらめきから生まれた和音やタッピングを駆使し、ユニークな響きやベースラインを奏でる是永亮祐、クラシックの素養を持った大澤実音穂のドラムもそこへ加わり、“テン年代のアートロック”と呼ぶにふさわしい美意識に満ちた音楽空間を描いていく。そして最新作の聴き心地がいいのは、過去2作に見られた実験的要素よりも「ライブ感を意識して制作しました」と大澤が話すように、躍動感にあふれているため。アルバムタイトルそのまま、斬新な音世界に福永浩平のシルキーな声の美しさが重なって高揚していく。