多様な層にアピール
DJたちによる普及で、若者たちには、ダンスミュージックとしてクラブで踊れるジャズが20年以上にわたって親しまれてきたが、一般の音楽リスナーにとっては、ジャズはまだまだ伝統的にして保守的な印象が強い。そういった状況の中で、クラブ層にも、従来のジャズファンにも、そして、ジャズを古くて融通の利かない音楽だと思い込んでいる層のいずれにもアピールできるロバートの存在はとても重要だ。ジャズの“現在”を更新しているだけでなく、ジャズに張り付いたレッテルを引き剥がせる可能性があるのだから。
新作『カヴァード』で聴かれる演奏は、紛れもなく最新のジャズ。そもそも、ジャズは既存の楽曲をモチーフにして、即興演奏でミュージシャン同士のコミュニケーションを自由かつ抽象的に表現する芸術活動でもある。マイルス・デイビスやジョン・コルトレーンも「マイ・フェイバリット・シングス」や「いつか王子様が」といった有名な楽曲を独自の解釈によって完全に自分のものにしていた。よって、『カヴァード』も元曲の認知度よりも、どれだけロバートが他人の曲を消化できているかということが問われるべきである。