実際にこの作品で繰り広げられたセッションは、ライブレコーディングということもあって、実に躍動的なアートフォームの記録が録音されている。3人のミュージシャンは、原曲の素晴らしさをシンプルなメロディーとして抽出しながらも、そのエッセンスにインスパイアされた情動や感覚を思いのままに描き出しているのだ。
ヒップホップ界と交流
思い返せば、ロバート・グラスパーのキャリアのターニングポイントとなるセカンドアルバム『イン・マイ・エレメント』が発売される前に、ブルーノートの本社で収録予定曲をノラ・ジョーンズのディレクターに聴かせてもらったのが僕にとって彼の音楽との出合いであった。いまだにその時の衝撃が忘れられない。明らかにヒップホップを聴いた世代であるのに、そこにはジャズの芸術性が充満していたからだ。
そのとき不良のイメージが強いヒップホップとジャズの知性が結びついた独自の音楽性は、必ず話題になるであろうと確信した。そして、打ち込みのビートの上で単に弾きまくるといった戦略的な結合ではなく、ヒップホップ界のアーティストたちと交流を持ち続けているリアリティーに好感が持てたことを覚えている。彼はホンモノなのだなぁと。