しかし、解剖学が専門の知人の大学教授によれば、日本は解剖医不足が深刻で、突然死などの死因究明ができず、犯罪捜査にも支障を来しているそうだ。少子高齢化で単身の高齢者が増加、誰にも看取られずに死亡する人が増えている。遠く離れている肉親が死因を知りたいと思って解剖を依頼しても、死因を調べるための解剖が行われるまでに時間がかかってしまう。結局、死因が特定できない異常死とされる遺体のうち、解剖が行われるのは約1割強というのが現実なのだそうだ。
これでは、本当は犯罪が絡むのに闇に葬られてしまうケースも危惧される。危機感を持った警察庁は11年春、各省庁が横断的に協力して解剖医を育成するとともに、遺体解剖を専門に行う「法医学研究所」を各都道府県に設置する「法医解剖制度」を新たにつくるよう提言している。
今のところ、文部科学省や厚生労働省との足並みがそろわず、具体的な動きには至っていないが、タブー視せず解剖をオープンに議論する必要があるだろう。なんと言ってもレンブラントが絵を描いた17世紀、解剖はある種の社交の場にさえなっていたのだから。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)