太田氏が述べるように、安全と利便性を同時に確保することが重要だ。このような事件を完全に防ぐために、新幹線の乗客に対して乗車前の持ち物チェックなどで危険物の持ち込みを防ぐことが効果的だ。しかし、これは現実的でない。なぜなら、新幹線の特長は、数分おきに出発する列車に飛び乗ることができることだからだ。航空機並みの保安検査をすれば、新幹線の利便性が失われる。さらに、新幹線だけに手荷物検査が導入されてもテロリストが在来線に対する放火を行う可能性は排除されない。すべての列車を対象に手荷物検査を行うことは非現実的だ。
来年の伊勢志摩サミット、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに備えて、テロに対するシミュレーションを政府と鉄道各社が行うことが不可欠だ。その時に重要なのは、鉄道テロ対策の経験を積んだイギリス、フランス、ベルギー、スペイン、イスラエルなどの専門家の知見を生かすことだ。
テロリストは、必ず政治的な目的を持っている。テロという手段では、この目的を達成することができないことをテロリストに認識させることが、最良のテロ対策である。このあたりのノウハウについては、イスラエルが優れている。テロ対策について、政治主導でイスラエルとの関係を強化することが効果的と思う。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)