新興5カ国によるBRICs首脳会議に臨むウラジーミル・プーチン露大統領。訪日を実現し、G8(主要8カ国)への復帰を狙っているようにもみえる=2015年7月9日、ロシア連邦・バシコルトスタン共和国ウファ(ロイター)【拡大】
プーチン氏訪日の狙い
今回の日露首脳電話会談を踏まえ、日本外務省もプーチン氏の訪日に向けた準備を始めている。もっとも、外務官僚は安倍首相の強いイニシアチブがあるから仕事をしているのであって、内心では「プーチン氏訪日が実現すると日米関係に悪影響が及ぶのではないか」ということを真剣に心配している。
事実、米国はホワイトハウスも国務省も日露接近を歓迎していない。むしろプーチン氏は、このあたりの事情をわかった上で、日米間にクサビを打ち込もうとしている。プーチン氏の狙いは、G7(先進7カ国)によるウクライナ問題をめぐるロシアへの制裁を解除させることだ。その上で、安倍首相のイニシアチブで、来年の伊勢志摩サミットにプーチン氏が出席し、G8への復帰を果たすことを狙っているのではないかと筆者はみている。
プーチン氏の訪日準備に踏み込むことによって、日本は米国との関係において、かなり面倒なリスクを負うことになる。
日本外務省は内部にさまざまな見解の相違があっても、首相官邸が明確な方針を定めれば、その方向に向けて動く。しかし、ロシア外務省の事情は異なる。ロシアの外交官は、日本との関係を前進させるためには、北方領土問題でロシア側が譲歩しなくてはならないと認識している。しかし、譲歩した場合にロシア外務省が負わなくてはならないリスクが大きすぎる。従って、ラブロフ外相を含め、上から下まで、北方領土問題については強硬姿勢を崩していない。