脚本はルキーニへの当て書きだったそうだ。「この映画はキャスティングがすべてだと思っていて、結果的に主人公を演じられるフランス人の俳優はルキーニしか考えられませんでした。会えば分かりますが、ルキーニは知的な人物であり、加えて、人間の感情の機微を理解したうえで、演技でしっかりと表現できてしまう豊かな感受性を備えている。際だった能力の持ち主なのです」
フォンテーヌ監督が当て書きをしたもう一つの理由に挙げたのは、ルキーニが孤独な人物を演じることに長(た)けていることだった。フォンテーヌ監督は「長年、必死に何かを求め続けてきたのに、決して手が届くことはない-。そんな人物を感情豊かに提示してくれるのです」と説明し、ベテラン俳優に絶対的な信頼を寄せていることを改めて強調した。
仏語で演じるジェマの才能
一方、ジェマをヒロインに抜擢(ばってき)した理由について水を向けると、フォンテーヌ監督は「実は1秒半で決めたんです」と間髪を入れず答えた後、難航したオーディションの様子に言及した。「ピンとくる女優がなかなか現れなかったんです。そんな時、フランス語が話せないジェマがオーディション部屋に入ってきて、私に一言『ボンジュール、アンヌ』とあいさつしました。するとジェマはスカーフを脱いだんです。そのしぐさがとてもセクシーで、魅力的だったんですよね」