花の別れ=2015年7月11日、東京都府中市(野村成次撮影)【拡大】
少し歩けば周囲は水田地帯だ。キジが絞り出すような声で鳴く。あぜ道を何かが走った、間違いなくキツネだ。病室でそんな話をしていたら、意識の薄れた母は「フン、また撮り逃したのか」と、夢の中で息子を叱咤(しった)していたかもしれない。そんな老いた花は、今月上旬に散った。
さて奥多摩だ。夏も涼しいですかと尋ねられるが、とんでもない。都心と変わることなく立派に暑い。その中を坂道を登ったり下ったり、ペットボトルの水など、あっと言う間に空になる。夏場にもよく出かけて、よく熱中症にならなかったものだ。ところが、これっといったネタに出合ったら、暑いも寒いも忘れてしまう。撮影に熱中してしまうので、熱中症が入り込む余地がないのかも。
母の施設にこの連載を送っていたが、受け取る人がいなくなってしまった。(野村成次、写真も/SANKEI EXPRESS)
■のむら・せいじ 1951(昭和26)年生まれ。産経新聞東京、大阪の写真部長、臨海支局長を経て写真報道局。休日はカメラを持って、奥多摩などの多摩川水系を散策している。