5月のフジ=2015年5月5日、東京都西多摩郡奥多摩町(野村成次撮影)【拡大】
JR青梅線の白丸駅近くの白丸湖。ここへは何度も来ている。稲妻が走る雨の日にも来たし、真冬の夜中に着いて朝まで星をみていたこともある。奥多摩の新緑が美しいGWに来てみた。今年の湖は水がたっぷりで、カヌーを楽しむ人がアメンボのように進んでくる。穏やかな五月晴れの日だった。
湖の数馬峡橋から眺めて、あれっと思った。岸辺の大きなフジの木が薄紫の花をつけている。何度も来たけれど、その木があることも知らなかった。フジは花が咲くときには結構自己主張するのだが、普段はまわりの緑にとけ込んで木が目立たない。だから気がつかなかったのだ。花咲く時期に、この橋を渡ったのは初めてだったのか。
奥多摩にはフジの木が多い。名木というわけではないが、斜面の雑木林の中に、渓谷の片隅にこの花を見つけると、ここにもあったのかと改めて思う。もちろん民家の庭先にも咲いているが、ひっそりと咲く野生のフジからは高貴な雰囲気を感じてしまう。古代には、紫の色は身分の高い人にだけ許されたからだろうか。