しかし、一向に芽が出ない。潮目が変わったのは、3年ほど前だという。「それまではどこかヘンな世界をミステリーに仕立てていたのですが、あるとき、もっと広範に、住んでいる世界と地続きのものを書こう、と思ったんです。社会ってどうなっているのか、何も知らなかったから、ニュースを見るようにして。そうすると、『あれ、これって何なの?』とひっかかるようになりました」
方針転換が奏功し、昨年度の江戸川乱歩賞では最終選考まで残った。「今取らないと」という思いでリベンジした本作で、見事受賞を勝ち取った。
現在はコールセンターで働きながら執筆する。「いい意味でも悪い意味でも、自分の生き方が随所に出ている」という本作。伏見をはじめ、居場所を探してもがく登場人物たちが、ハードなタッチで描かれる。「常に自分はアウトサイダーだという意識を抱えながら生きてきた。自分の居場所を獲得するためには何でもする」。つかんだ居場所で、書き続ける。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■ご・かつひろ 1981年、青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。現在、大阪市在住。本作で第61回江戸川乱歩賞を受賞。
「道徳の時間」(呉勝浩著/講談社、1600円+税)