楢葉町では避難指示の解除前日の9月4日、復興へのスタートを決意し、ロウソクを灯した=2015年、福島県双葉郡楢葉町(大西正純撮影)【拡大】
政府は6月、福島の復興指針を改定し(1)避難指示解除準備区域と居住制限区域を2017年3月までに解除(2)2区域では精神的賠償を解除時期にかかわらず18年3月まで支払う-など、住民の早期帰還と自立を促す方針に大きく転換し、楢葉町の解除も後押しした。
ある政府関係者は「これまで賠償の打ち切りと解除の時期が連動していたことがネックだったが、指針改定で解消できた。事故後6年までの解除という『目標』を定めたことも大きく、まさに政治の力だ」と評価する。
政府は南相馬市と川俣町、葛尾村でも解除に向けた準備宿泊を開始。政府内では「楢葉の解除を機に、いいサイクルで3自治体も解除したい」と期待を寄せる。
スタートライン
「やっぱり故郷はほっとするね」。準備宿泊が始まり、楢葉町の自宅で生活を再開させた佐藤義行さん(91)はくつろいだ様子を見せた。
解除後も自宅に住むが「買い物、交通、医療。あらゆる面で不便」とこぼす。町には現在、病院はなく、商業施設も不足。事故前は子供や孫らと8人家族だった。高齢の夫婦2人で暮らす今は、治安面でも不安だ。
避難も長引き、地域のつながりも失われつつある。いわき市に避難する女性(61)は「いわきに家を買う町民も多い。近くに知り合いがいないなら、帰りたくない」。