ひげ面の父親にキスされ、満面の笑みを浮かべているのは、7歳のザイド君。故郷のシリアから欧州を目指し、ハンガリーでは女性カメラマンに蹴られ、散々な目にあってドイツ入りし、幸運の女神に見いだされて新天地のマドリードに到着したスナップだ。
父親はオサマ・アブドル・モフセン氏。ザイド君を抱いてハンガリー警察に追われていた逃避行の際に、女性カメラマンに足を掛けられ、欧州の大地にたたきつけられた。この映像は全世界に流され、シリア難民の悲劇を象徴するとともに、同情を集めることに大きな役目を果たすことになる。
モフセン氏、実はシリア1部リーグ「アル・フトワ」で監督を務めたこともあるサッカーの指導者だった。いわば、西野朗(あきら)氏や長谷川健太氏が難民としてさまよったようなものだ。それほどシリアは混乱を極めているともいえる。
それはさておき、AP通信やスペインの現地紙によれば、マドリード郊外にあるサッカーコーチの養成スクール「セナフェ」のディレクター、ミゲル・アンヘル・ガラン氏がモフセン氏の事件と経歴を知り、ぜひ自校に招きたいと現地のスポーツ記者に相談を持ちかけた。