便利とは逆を
ロックフェスティバルを開催したい-。その思いが天神山で実現するまでは、10年近い月日を要したという。一堂に多くのバンドを集めるフェスというスタイルはもちろん、野外で、しかも東京から離れた自然の懐に抱かれた中でのキャンプインのフェスは、20年前の日本ではほとんど開催されていなかった。
「日本ってすごく便利な国。コンサートの会場では、トイレもあるし、コインロッカーもある。何でもかんでも至れり尽くせり。それとまったく逆のことをやろうとした。昔から、何か新しいものが入ってくると『ノー』という国なんだよ。俺はその日本をけなしているわけじゃないんだよ。『ノー』と言って新しいものを吸収しながら、柔軟なクッションも持っていて、良いものはどんどん受け入れていく。新しいものとして再加工、再提案していく。野外フェスティバルも、ほとんどの場所が、ほとんどの人が『ノー』だった。『ノー』といわれると、自分の性格上、うれしいんだよ。実現することが難しいことでも、挑戦したいと思ってしまう」
東京からそれほど遠くないという観点で、北は福島から、西は静岡や長野まで、フェスティバルが開催できる会場を、日高さんは探し続けたという。愛車にテントを積み、気になった場所でキャンプする。そして見つけ、開催にこぎつけた場所が、富士山の裾野、天神山だった。