カメラを片手に機内を歩いてみた。窓の外の光景にくぎ付けになる子供たちと、スーパームーンを夢中に撮影するお父さんやお母さん。テレビ取材に応じる子供もいる。笑顔を浮かべて嬉しそうにお父さんに語り掛ける子供と、それを優しい目で見つめる父親の姿がとても印象的だった。
“邪魔”できない雰囲気に
取材としては失格かもしれないが、親子の睦まじい姿を見ていると、“部外者”としては声を掛けようという気持ちにどうしてもなれなかった。ただ、それでは仕事にならないので、彼らの会話に耳を傾けて言葉を拾うことに徹した。一番耳にした言葉は「すごいきれい」。純朴な子供たちの率直な感想だ。
飛行機は宮城県上空を旋回し、成田空港を目指して帰路に就いた。スーパームーンをじっくりと眺めることができたのは20~30分だっただろうか。約2時間のフライトを終えるとチャーター機は無事に成田空港に着陸。そのままタラップを降りてバスに乗り、格納庫へと移動した。子供たちはここで折り紙ヒコーキを飛ばすなど様々な遊びに興じ、最後に集合写真を撮ってイベントは終了。参加者はお土産を受け取りニコニコ顔で解散となった。
成田空港に戻ってきた時の感想は、「たった2時間前にここを出発して、ついさっきまであの雲の上にいたんだ」ということ。短時間で上空に上がりスーパームーンを眺めて帰ってくるなんて、ロケットの宇宙旅行も斯くや、と思えるほどに濃密で貴重な体験となった。同じ便に搭乗していた日本航空のスタッフもみな満面の笑みを浮かべていた。彼らだってこんな経験はそうそうできるものではないだろう。
「世界や宇宙のことを考えるきっかけに」
日本航空の代表取締役専務、大川順子氏はイベント終了後、「子供たちが自分の未来だけでなく、日本や世界、地球についていろんな考えを馳せてくれれば嬉しい」と今回の企画の意義を語り、今後の取り組みについても「宇宙や環境について何かできればいいと思う。世界と交流できると、子供たちの夢が広がるきっかけになると思う」とアイデアを膨らませていた。
今回招待された子供たちは今頃、友達たちの間で「宇宙飛行を終えたヒーロー」のような扱いを受けているのではないだろうか。ひょっとしたら、成田に戻った時に「宇宙飛行士になりたい」と思った子供がいたかもしれない。彼らがチャーター機で少しだけ宇宙に近づいたことは間違いないのだ。
完全に余談だが、イベントの翌朝に筆者の7カ月になる娘が、取材でもらった日本航空のチケットホルダー付きネックストラップを首にかけて遊んでいた。もうちょっと大きくなったら、今度はプライベートで娘と『空育』のイベントに参加しようかな、なんて考えてしまった。